もちの詳細を少しだけ。
もちは、男女での双子の生まれ。
性別は違うけど、顔はめっちゃ似てる(独特のおっとり感も似てる)
それゆえか、女の子には基本的に優しい。(というか、女の子への話し方や気遣い、理解が身についてる)
私が見るたび、男子としかつるんでなかったけど
女の子への対応がうまいからか「女たらし」とも言われてる時期もあった。
スポーツ万能で、学級委員も何度もなってる。
まあ、存在すら小5まで知らんかったけど。
小1から中3まで同じメンバーで過ごしてたのに、同じクラスになったことは2回しかない。
けど、縁というのは不思議なもので、出逢ってしまったんだから、始まってしまったものは仕方ない。
中1の秋から、揃って生徒会に入り(もちは学級委員になったことがあるから票が入るのはわかるけど、私は学級委員に一度もなったことがなくて友達に誘われたまま応募したから、マジで奇跡)
クラスも部活も違っても、接点はあった。
ここらへんの記憶は曖昧で
中1のスキー教室の時は付き合ってたと思うけど、また例によって別れ
中2の春も付き合ってた記憶がある。
ちなみに、もちも私も、別れてる時には他の人と付き合ったりもしてた。(つっても大抵2週間〜1ヶ月とかだけど)
それに対して、私が嫉妬したことは一度もない。
私にとっては、もちが誰と付き合おうが
心のどこかで絆があれば、それでいいと思っていた。
もちろん、もちに彼女がいる時は話しかけないようにしてたけど。
というか、もちが話しかけてきても「あんた今彼女いるんだから、話さない方がいいんじゃない?」って私が言うくらいだった。(生徒会の仕事があると話さなきゃだったけど)
それでもどこか、『いつでも、うちらはうちらだ』っていう意識があった。
私も私で、違う人と付き合ってみたりして、付き合ってる時はちゃんと惹かれる部分があって付き合うのだけど
今となっては思い出せないくらいの、かるーいものだった。
もち以外とは、キスすらしなかったし、手を繋ぐことぐらいもあったか無かったかくらいで。
だけど、もちは私が誰かと付き合ってても、隙を見て手を出してきたりして
「あんた今彼女いるんじゃなかったの?やめなよ、こういうの」
「だってさ。俺からさやかに別れようなんて、一回も言ったことないもん」
「今はお互いに別の人と付き合ってるんだから、駄目だろって言ってんの!誠実じゃないでしょ」
と叱ると、もちは「んー」って言ってやめる。
大抵、拗ねた顔をして。
その表情を見ると手のかかる子供を言い聞かせてるような、“しょうがないヤツだなぁ”なんて気持ちになっていた。
てか、当時はもち以外の人と、自分なりに誠実に付き合ってるつもりだったけど、こんなん真っ黒だよね(笑)(←笑い事じゃない)
もはや何回目かわからない付き合う関係になった時に
「私がいろんな人と付き合ってるのって、嫌じゃないの?」
と純粋に興味本位で聞いてみたことがある。
実際、私自身はもちに対して嫌と思ったことは無かったから。
「ん〜………なんていうか、お互いしか知らないよりさ、いろんな人と付き合ってみて、それでもお互いしかいないって思える方が、本物だと思うんだよね。」
というもちを見て、たしかに、と納得した。
多分、二人とも変人なんだと思う。
「だから、さやかが誰と付き合ってもいいけど、最後に俺のところに来てくれれば、別にそれでいいかな〜」
地べたで隣に座って、手持ち無沙汰だったのか土いじりをしながら言ったもちを、今でもよく覚えている。
私も、根拠はないけど、そうなると思っていた。
の、だが。
もちとの関係がすっぽりと抜けた期間がある。
私がNと仲良くなった頃や、T先輩を観察していた頃であり
もちがmちゃんと付き合っていた時期だ。
生徒会の仕事で話すことはあっても、用事だけ話すくらいで
mちゃんと付き合ってた頃だけは、もちは私に手を出して来なかったし
私ももち以外で初めて相棒みたいな感覚を覚える相手に出逢って
お互い自然と離れていった。
特に寂しいとか、そう思うこともなく。
中2の夏休み明け。
mちゃんが転校することになった。
もちの顔を見ると、少しだけ元気がないように見えた。
だけど、二人は遠距離恋愛をすることにしたと聞いて
その時初めて私は
『……もちにとっての本物は、私じゃないのかもしれないな。』
と思ったのだった。
でも、それでも良かった。
もちが元気になるといいな、寂しくないといいな。
それだけを想っていた。
Nと気まずくなったあと、秋に2回目の生徒会選挙期間に入った。
もちと私は、2年連続で生徒会に残ることになり
新しく入った生徒会メンバー、Kとなんやかんやがあって付き合うことになった。
ゆとり世代ゆえ、行事にめちゃくちゃ力を入れてる学校だったから、たくさん生徒会の仕事はあった。
もち(会長になった)とは大切な仲間として関わって、kとはたくさん協力して仕事した。
kは頼もしかった。
私は生徒会に入っていても、裏方業務が好きで、リーダーシップをとれるタイプじゃなかったから、いっぱい助けてもらった。
kとは、約1年続いた。
中3の春の終わり
もちとmちゃんが別れた、と噂で聞いた。
大丈夫かな、と心配にはなったけど、あえて何も言わなかった。
夏休み
生徒会室で1人でもくもくと作業してると、もちが来た。
何を言うでもなく、私の隣に座る。
「…元気?」
って聞いてみた。
「ん〜」
と答えながら、私の肩に頭をのせる。
何も言わずにいると、遠慮がちに横から私に抱きついた。
「はあ……やっぱ、さやか落ち着く…」
そんな弱々しいもちの呟きを聞きながら思った。
ああ、もち、頑張ったんだな、と。
やっぱり、mちゃんは本気だったんだな、と。
私にとっては、言葉をもらったり隣にいてもらうことが甘えだけど
もちにとっては、こうして触れる行為が、甘えなのかもしれない、と
ただの猿化だと思っていたけど、初めてそんな風に思い至った。
しばらくもちはそのままでいて
私も何も言わず、そこにいた。
「…ごめんね、さやか、今別の人がいるのに」
と言って離れたもちに、何もしてあげられなかった。